研究概要 |
プロスタグランジン(PG)D2の生成酵素であるリポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)の合成型平滑筋における発現と冠動脈硬化の発生進展機序の関係について検討し、冠動脈硬化の進展予防のための臨床的基礎データを得た(Lipocalin-type prostaglandin synthase is a powerful biomarker of coronary artery disease. Inoue T, Matsumoto T et al.Circulation 2002,106(19):II-345)。 L-PGDSは冠動脈硬化性病態の主因をなす合成型平滑筋細胞の指標として有用な蛋白質であり、冠動脈形成術後の細胞増殖、即ち再狭窄の抑制作用も有する可能性があり、その血清学的診断の重要性について報告してきた(日本循環器学会総会、平成13、14年発表)。その投与やその発現の誘導が動脈硬化の進展予防に発展する可能性についてさらに動物実験モデルで検討中である。 L-PGDSがNO synthaseの発現に関連するとの知見からL-PGDSが冠動脈の内皮および平滑筋の機能に関与している可能性があり、ヒトの冠循環において生理活性物質であるブラジキニンが組織プラズミノゲンァクチベーターを産生させることを報告する一方(Minai K et al. J Am Coll Cardiol,2001;37,1565)(Matsumoto et al. J Am Coll Cardiol,2003 In press)、L-PGDSがヒトの早期動脈硬化巣である冠動脈内膜増殖層の平滑筋細胞において活発に生成されることを既に報告したが、PGDSがプラズミノゲンアクチベーター抑制因子(PAI)-1を抑制する仮説についても明らかにし、血管内皮機能と線溶能の低下を背景とした冠動脈硬化症や急性冠症候群におけるPGDSの役割についてさらに検討している(Matsumoto et al. Jpn Circ J,2001,65:1052)(Yokohama et al. Circ J,2002;66:30-4)(Matsuo S et al. Can J Cardio1,2002;18:183)。
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