研究分担者 |
江口 直美 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 副部長 (10250086)
鳥居 隆三 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 教授 (50106647)
裏出 良博 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 第2研究部, 研究部長 (10201360)
江口 豊 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (00263054)
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研究概要 |
プロスタグランジン(PG)D2の生成酵素であるリポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)の合成型平滑筋における発現と冠動脈硬化の発生進展機序の関係について検討し、冠動脈硬化の進展予防のための臨床的基礎データを得た(Lipocalin-type prostaglandin synthase is a powerful biomarker of coronary artery disease. Inoue T, Matsumoto T et al. Circulation 2002, 106(19):II-345)。 L-PGDSは冠動脈硬化性病態の主因をなす合成型平滑筋細胞の指標として有用な蛋白質であり、冠動脈形成術後の細胞増殖、即ち再狭窄の抑制作用も有する可能性があり、その血清学的診断の重要性について報告した(日本循環器学会総会、平成13、14年発表)。血清L-PGDSの値と冠動脈硬化の程度(Gensini score)については有意な相関を認め、現在その成果をまとめた(投稿中)。L-PGDSの投与やその発現の誘導が動脈硬化の進展予防に発展する可能性についてサルのin vivo動物実験において検討し、冠動脈のバルーン傷害モデルにおいてL-PGDSが冠動脈の内膜増殖層において過剰に発現し、傷害血管に対し保護的な役割を果たしているという結果を得た。 L-PGDSがNO synthaseの発現に関連するとの知見からL-PGDSが冠動脈の内皮および平滑筋の機能に関与している可能性がある。ヒトの冠循環において生理活性物質であるブラジキニンが組織プラズミノゲンアクチベーターを産生させることを報告し(Minai K et al. J Am Coll Cardiol,2001,Matsumoto et al. J Am Coll Cardiol,2003)、L-PGDSがヒトの早期動脈硬化巣である冠動脈内膜増殖層の平滑筋細胞において活発に生成されることを既に明らかにしているが、PGDSが線溶系にも関連しているとの仮説についても明らかにし、血管内皮機能と線溶能の低下の冠動脈硬化症や急性冠症候群における意義(Matsumoto et al. Jpn Circ J,2001、Yokohama et al. Circ J,2002、Matsuo S et al. Can J Cardiol,2002)についてさらに検討し、PGDSとの関連についてさらに解析している。
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