細胞移殖を用いた不全心筋への遺伝子導入による心不全の治療法の開発

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670710
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 川嶋 成乃亮 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (10177678)
• 研究分担者: 横山 光宏 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40135794)
• キーワード: 不全心 / 細胞移植 / 骨格筋芽細胞 / 遺伝子治療

研究概要

今年度は、心不全の新しい治療法の開発を目的に、骨格筋芽細胞の不全心への移植を行った。ラットの骨格筋芽細胞及び骨髄細胞を取り出し、直接針入法にて、正常心へ細胞移植した。その際に他家移植ならびに自家移植の移植細胞定着率を比較した。移植後2週間の時点で定着率を測定すると、他家移植の場合は、骨格筋芽細胞、骨髄細胞ともに、移植部位は炎症細胞浸潤及び瘢痕組織に変わっていた。これに対し、自家移植では移植細胞の定着が見られ、骨髄細胞では、炎症所見は軽度であるものの明らかな筋細胞の出現は認められなかった。自家移植骨格筋芽細胞では、移植部位に筋細胞と考えられる細胞が定着しており、更に移植4週後でも移植された筋細胞が定着していた。
以上の所見を元に、不全心への自家骨格筋芽細胞移植を行った。不全心モデルとしては、Dahl食塩感受性ラットを用いた。本モデルでは6週齢より塩分を負荷を行うことで、第11週齢より心肥大出現、その後心筋収縮力低下が出現し、第15週齢より心不全を呈する。本モデルに対し、11週齢において左室10箇所に細胞移植(10^6 cells)を行った、心エコーでの検討にて、11週齢と比し15週齢では、無処置群では左室拡張末期系は5.69mmから6.62mmへ拡大し、左室駆出率は40.0%から35.2%に低下したが、骨格筋芽細胞移植群では、それぞれ、6.22mm、41.6%と左室拡張ならびに、左室収縮力低下が抑制されていた。現在、更に長期の観察ならびにその機序を検討中である。また、骨格筋芽細胞にex vivoにて心筋保護遺伝子cardiotrpin-1を導入後、不全心に細胞移植を行う実験系も進行中である。

研究成果

• [文献書誌] Yamashita T: "Mouse coronary angiograph using synchrotron radiation microangiography"Circulation. 105・2. E3-E4 (2002)
• [文献書誌] Namiki M: "Local overexpression of monocyte chemoattractant protein-1 at vessel wall induces infiltration of macrophages and formation of atherosclerotic lesion : synergism with hypercholesterolemia"Arterioscler Thromb Vasc Biol.. 22・1. 115-120 (2002)
• [文献書誌] Mizutani K: "Heparin and heparan sulfate inhibit extracellular signal-regulated kinase activation and myocardial cell hypertrophy induced by endothelin-1"Kobe J Med Sci.. 47. 47-58 (2001)
• [文献書誌] Yamashita T: "Role of endogenous nitric oxide generation in the regulation of vascular tone and reactivity in small vessels as investigated in transgenic mice using synchrotron radiation microangiography"Nitric Oxide. 5・5. 494-503 (2001)
• [文献書誌] Ishida T: "Serotonin-induced hypercontraction through 5-hydroxytryptamine 1B receptors in atherosclerotic rabbit cotonary arteries"Circulation. 103・9. 1289-1295 (2001)
• [文献書誌] Hiraoka E: "TNF-alpha induces protein synthesis through PI3-kinase-Akt/PKB pathway in cardiac myocytes"Am J Physiol Heart Circ Physiol. 280・4. H1861-H1868 (2001)