細胞移殖を用いた不全心筋への遺伝子導入による心不全の治療法の開発

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13670710
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 川嶋 成乃亮 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (10177678)
• 研究分担者: 横山 光宏 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40135794)
• キーワード: 不全心 / 細胞移植 / 骨格筋芽細胞 / 遺伝子治療 / カルジオトロフィン

研究概要

昨年度において、高血圧による代償性肥大心から心腔拡大・収縮能低下を伴う心不全へ移行するDahl食塩感受性ラットにおいて、自家骨格筋芽細胞移植療法は、一連の心室のリモデリングを抑制し、心機能保持に有効であることを明らかにした。今年度は、心筋に対し肥大の促進、および細胞保護的作用を有するCardiotrophin-1(CT-1)の遺伝子を、前もってレトロウィルスを用いて骨格筋芽細胞に遺伝子導入し、その骨格筋芽細胞を移植した場合の効果について検討した。
17週齢(移植6週後)において組織学的に検討したところ、MB+CT群では心筋内の移植した細胞においてCT-1の過剰発現が持続していることが、免疫染色により確認された。心エコー法による検討にて、Sham群と比べ、骨格筋芽細胞単独移植群(MB群)、CT-1遺伝子導入骨格筋芽細胞移植群(MB+CT群)共に、心腔の拡大および壁厚の非薄化を抑制し、また心筋収縮力も大であった。このような心室リモデリング抑制効果及び心機能保持効果は、MB群に比べ、MB+CT群で増強していた。またMB+CT群では他の2群に比べ心筋細胞の横断面積が約17%大きいことが認められたCT-1の過剰発現が、骨格筋芽細胞移植の効果を増強させた機序としてはCT-1が移植細胞周囲の心筋細胞肥大をもたらしたこと、ならびにCT-1が移植細胞の生着率を増加させたことが考えられた。
今回の研究より、CT-1遺伝子を導入した骨格筋芽細胞を移植に用いた場合、骨格筋芽細胞移植単独と比べ、より効率的に心機能が保持されることが明らかになった。不全心への細胞移植療法ならびに遺伝子導入の有効性の検討は重症心不全に対する新しい治療法の開発に貢献することが期待される。

研究成果

• [文献書誌] Kawai M: "Ral GDP dissociation stimulator and Ral GTPase are involved in myocardial hypertrophy"Hypertention. (in press). (2003)
• [文献書誌] Kobayashi-Satomi S: "Cardiac myocytes are recruited by bone marrow-derived cells in intact murine hearts"Kobe J Med. (in press). (2003)
• [文献書誌] Kawashima S: "A HMG-CoA reductase inhibitor reduces stroke events in stroke-prone spontaneously hypertendive rats"Stroke. 34・1. 157-163 (2003)
• [文献書誌] Yamashita T: "A 3-hydroxy-3-methylglutaryl co-enzyme A reductase inhibitor reduces hypertensive nephrosclerosis in stroke-prone spontaneously hypertensive rats"J Hypertens. 20・12. 2465-2473 (2002)
• [文献書誌] Ozaki M: "Overexpression of endothelial nitricoxide synthase accelerates atherosclerotic lesion formation in apoE-deficient mice"J Clin Invest. 110・3. 331-310 (2002)
• [文献書誌] Ozaki M: "Overexpression of endothelial nitric oxide synthase in endothelial cells is protective against ischemia-reperfusion injury in mouse skeletal muscle"Am J Pathol. 160・4. 1335-1344 (2002)