内皮依存性過分極反応には内皮由来過分極因子(EDHF)の関与が示唆されているが、そのメカニズムは十分明らかでなかった。本研究ではラット血管におけるアセチルコリンによる内皮依存性過分極反応およびそれによる弛緩がgap junction阻害薬である18αグリチルリチン酸やカルベノキソロンで抑制され、同反応の少なくとも一部はgap junctionを介した内皮細胞より平滑筋細胞への過分極反応の直接伝達によることが明らかとなった。さらにconnexinに対する特異的抗体を用いて免疫染色を行い、myoendothelial gap junctionを構成するconnexinの同定を試みており、今年度は内皮細胞間にはconnexin40が豊富に発現していることなどが明らかになった。 また、我々は既に内皮依存性過分極反応が加齢に伴い減弱することを報告しているが、この障害がレニン・アンジオテンシン系の阻害薬で改善するか否かを検討した。その結果、正常血圧高齢ラットにおけるアンジオテンシン変換酵素阻害薬、もしくはアンジオテンシンII受容体拮抗薬による慢性治療は、降圧効果と独立して加齢に伴う内皮依存性過分極・弛緩の障害を改善することが明らかとなった。即ち、レニン・アンジオテンシン系の阻害が加齢に伴う内皮機能異常を改善する可能性が示された。 今後、各種病態や加齢モデルにおいてconnexinの発現量の変化を検討し、内皮機能異常やそのレニン・アンジオテンシン系阻害薬での改善とmyoendothelial gap junctionの変化との関連について、細胞、分子レベルで明らかにしていく予定である。
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