研究概要 |
本研究はまずmyoendothelial gap junctionの内皮依存性過分極因子(EDHF)を介する過分極反応への関与、およびgap junctionを構成するconnexinの同定を目的とした。その結果、ラット血管においてはEDHFを介する過分極及び弛緩反応は、gap junctionの阻害薬で強く抑制され、EDHF反応にgap junctionを介した情報伝達が重要な役割を果たすことが明らかとなった。さらに、免疫染色を用いてgap junctionを構成するconnexinの種類を検討し、血管にはconnexin 37,40,43の3種類が分布しており、内皮細胞間には主にconnexin 37、40が発現していた。従って、これらのconnexinがEDHF反応に重要な役割を果たしていると考えられた。 我々は既に、EDHFを介した過分極反応はラット血管において、加齢で障害されることを報告しているが、今回、この障害がアンジオテンシン変換酵素阻害薬もしくはアンジオテンシンII受容体拮抗薬で著明に改善することが明らかとなった。しかもこの改善は降圧のみでは説明できず、レニン・アンジオテンシン系の阻害自体が重要であることが示唆された。 次に、gap junctionの構成蛋白であるconnexinの血管内皮細胞における発現が、高血圧及び治療で変化するか否か検討した。その結果、高血圧においてconnexinの発現が低下しており、しかもこの低下は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬で改善した。これらの変化はEDHFを介した反応の高血圧における変化と一致しており、gap junctionの変化がEDHFの変化と密接に関連している可能性が示唆された。 以上の検討により、myoendothelial gap junctionの本態、病態生理学的意義さらにはその修復法等に関して、多くの有用な知見が得られた。
|