血管内皮細胞からサイクリン依存性キナーゼ阻害因子p27^<Kip1R>の新規アイソフォームを同定した。新規アイソフォームは、p27^<Kip1>とN末端162アミノ酸は同一であるが、特異的な18アミノ酸からなるC末端を有する。新規アイソフォームはプロテアソーム分解に抵抗性であることから、p27^<Kip1R>(Degradation resistance isoform of p27^<Kip1>)と命名した。 p27^<Kip1R>の核移行は領域153-168を必要とするが、この領域には塩基性アミノ酸は一残基(K168)しか含まれておらず、また、疎水性アミノ酸を核移行に必要とした。すなわち、非典型的な2分裂型核移行シグナルと考えられた。このため、p27^<Kip1R>の大部分は核に局在するが、一部細胞質にも局在した。 GFP発現系を用いて細胞増殖に及ぼす影響を解析し、p27^<Kip1R>の増殖抑制因子としての機能を、血管平滑筋細胞およびHeLa細胞を用いて明らかにした。増殖抑制には、p27^<Kip1>と共通のN末端領域が必要であった。増殖抑制機構は両アイソフォームで共通と考えられた。 6週齢SHRの大動脈にはp27^<Kip1>が、正常ラットではp27^<Kip1R>が、主なアイソフォームとして発現する。週齢を重ねると、SHRにおいてもp27^<Kip1R>発現が優位になった。正常ラット大動脈を培養するとp27^<Kip1R>が消失し、p27^<Kip1>が主に発現した。すなわち、個体レベルで、血管の増殖性とp27^<Kip1R>発現に逆相関が示唆された。 血管内皮細胞において、細胞間接触の形成により、転写活性亢進により、p27^<Kip1>発現が増加することを明らかにした。Kip1遺伝子をクローニングし、プロモーターアッセイを行い、細胞間接触に反応するプロモーター領域があることを明らかにした。
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