研究概要 |
細胞膜受容体の一つであるインテグリンは、血管新生や悪性腫瘍の転移等で研究されてきた。しかし、インテグリンは細胞の細胞外マトリックスへの接着のみならず、細胞増殖や遊走といった細胞機能にも関与していることより、心血管病においてもこの機構が関与していると考えられる。近年、β1インテグリンが心筋細胞の肥大に関係しているとの報告があり、次第に心血管病でのインテグリンの関与が検討されてきている。我々は、以前より心機能と心筋間質を中心に研究しており、心線維芽細胞と細胞外マトリックス間でのインテグリン機構と心機能の関係について検討してきた。しかし、インテグリンの種類は20種類以上あり、これらと接着する細胞外マトリックスも種類があり、それぞれの接着でその作用が異なることよりインテグリンの機構は複雑である。我々は、心血管病に重要な役割を担っているアンジオテンシンIIが、in vivoの実験で心線維芽細胞のαV、β3,β5インテグリンの発現増強や細胞外マトリックスヘの接着の増強、血管平滑筋においてもαV、β3,β5インテグリンが遊走に関与し動脈硬化促進にも働いていることを報告してきた。また、高血圧での心リモデリングにおいても、腎血管性高血圧モデルの2K1Cラット心で、心肥大、線維症と心拡張障害の出現と平行してαV、β3,β5インテグリンの発現が増強し、インテグリンに関係するシグナルであるfocal adhesion kinaseのリン酸化が亢進していることを見いだした。このことより、心血管病のリモデリングに心線維芽細胞や血管平滑筋細胞のこれらのインテグリンが関していることが示唆される。
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