研究概要 |
心不全の病態生理においてrenin-angiotensin-aldosterone system (RAAS)が重要であることは広く認識されている。その内、angiotensin IIの作用機序に関する検討は比較的数多く行われているが、アルドステロン(Aldo)に関しては報告が少なく、いまだ解決すべき問題が山積している。従来、Aldoは副腎のみで産生されると考えられてきたが、最近の研究により副腎外Aldo産生系が報告され注目を浴びている。我々も。ヒト不全心筋からのAldの産生系を最近報告した。これは心不全神経体液性因子研究において従来にない新しい概念であり、Aldが不全心筋から分泌される機序ならびにその病態生理学的意義は今後検討を進める必要がある。そして、その研究に基づいた新しい治療概念或いは具体的治療方法の構築が求められている。 そのような中で我々は、心臓におけるAldo産生がACE阻害薬で抑制できる可能性を考えた。心臓カテーテル検査において、ACE阻害薬を投与した群と非投与群に分けて、AIV, CS, Aoから採血することで検討した。CSとAoの差にて心臓全体からのホルモン産生量を、AIVとAoの差から心室から分泌されるホルモンの量が推察できる。その結果、ACE阻害薬費投与群ではAIV, CS濃度がAo濃度より有意に高い値を示したが、ACE阻害薬投与群では、3群間で全く変化がなかった。つまり、ACE阻害薬は副腎のみならず心臓(心室)におけるAldoの産生を抑制していることが示された。これは、ACE阻害薬の全く新しい作用機序である。 また、高血圧心において、非薬剤投与状態で同様にAIV, CS, Aoからの採血を行った。その結果、不全心と同様に、AIV, CSにおけるAldo濃度がAoよりも有意に高値であり、不全心のみならず高血圧心においても心室筋からのアルドステロン産生を明らかにした。これは、アルドステロンが高血圧ならびに高血圧性心臓病の発症に強く関わっていることを示したものである。
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