研究概要 |
アルドステロンの副腎外合成系が最近注目されており、我々はヒト不全心および高血圧心からもアルドステロンが分泌されることを示している。そして、その分泌がACE阻害薬にて抑制されることを示した。また、アルドステロンは、仔ラット心筋細胞培養系にてACE遺伝子の発現促進作用があることを報告している。当該研究においては、主に(1)アルドステロン合成酵素遺伝子CYP11B2のヒト心臓での検出と定量、(2)アルドステロン合成に対するナトリウム利尿ペプチドの抑制系の検討、(3)アルドステロンがACE遺伝子発現に係わる機構を検討した。(1の結果)心不全および非心不全の剖検心から組織を抽出し、CYP11B2遺伝子の発現量を調べた。CYP11B2は大変微量である為、通常のreal-time PCRでは検由困難であり、新たに同方法の変法を考案してCYP11B2遺伝子発現量を検討した。その結果、不全心では、非不全心に比べて有意に同酵素の遺伝子発現は亢進していた(J Clin Endocrinol Metab 2002)。(2の結果)仔ラツト培養心筋にて、ナトリウム利尿ペプチド(NP)の心臓アルドステロン合成抑制作用を検討した。内因性のNPを抑制する目的でGC-A受容体の選択的拮抗薬であるHS142-1を前投与して、アンジオテンシンIIにて刺激した。その結果、CYP11B2遺伝子の発現は亢進した。また、ANP, BNPを臨床で使用する濃度を培養細胞に添加しても同様の反応が認められた。以上より、内因性および外因性NPは心臓CYP11B2遺伝子発現を有意に抑制していることが示された(Circulation 2003)。(3の結果)アルドステロンによるACE遺伝子促進効果について、アルドステロン濃度と培養細胞を変えて検討している。アルドステロンは高濃度では、MRのみならずGRを介する系が存在すること、また、培養細胞の種類によって、ACE遺伝子発現に大きな違いが存在することを見出し、さらに検討を加えている。
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