研究概要 |
前年度の成果を背景に、ウサギの摘出心灌流標本を用いて以下の実験成績を得た。 1.Preconditioning(PC)によりprotein Kinase C-ε(PKC-ε)はconnexin-43存在部位であるintercalated diskに移行(translocation)し、このtranslocationはPKC阻害薬であるcalphostin Cにより阻害された。 2.PCによるPKC-εのtranslocation、ならびにPKC活性化薬であるoleyl-acetyl-glycerolによるPKC-ε,PKC-αのtranslocationはいずれもmicrotubulesの脱重合薬であるcolchicineにより阻害された。 3.PCによるp38MAP kinaseの活性化もcolchicineにより阻害された。 4.PCは30分虚血2時間再灌流による心筋梗塞量を有意に減少させたが、このPCの効果はmicrotubulesの脱重合薬であるcolchicine、nocodazoleのいずれによっても阻害された。 5.Lucifer yellowをトレーサーとして用い、心筋虚血の際のギャップ結合の開存を評価すると、in vitroの25分虚血の間にlucifer yellowが輸送された範囲は、PCならびにheptanolによる前処置により、有意に抑制された。 6.ギャップ結合阻害薬(heptanol,18α-glycyrretinic acid)はPCと同様に心筋梗塞量を減少させるという昨年度の成績が、構造の異なるギャップ結合阻害薬である2,3-butandione monximeによっても追試確認された。 以上の成績を、昨年度の実験成績と総括すると、虚血心筋におけるギャップ結合の閉鎖は、自己防御機構の一つであり、PCはmicrotubule依存性の機構を介してPKC-εのintercalated diskへのtranslocationをもたらし、おそらくconenxin-43の脱リン酸化促進によってギャップ結合の閉鎖を促進すると考えられた。
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