研究概要 |
1.内因性アンジオテンシン変換酵素阻害薬としてのアンジオテンシン(1-7) アンジオテンシン(1-7)はこれまでの基礎実験から、アンジオテンシンII受容体拮抗作用とともに,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作崩を有する事が象唆されている。以前の実験で我々はヒトの前腕抵抗血管において、アンジオテンシン(1-7)がアンジオテンシンIIの血管収縮作用を減弱させること、この作用はノルアドレナリンの作用に対しては認められないことを明らかにした。今回の実験ではアンジオテンシン(1-7)がアンジオテシンIの血管収縮作用を減弱させうるか(ACE阻害作用)、また以前われわれはブラジキニンの血管拡張作用を増強させることを示したがこれがACE害阻作用を介したものか検討した。 アンジオテシンIおよびIIを前腕動脈から1-50pmol/minアンジオテシン(1-7)100,1000,5000pmol/minまたはプラセボと共に注入し、前腕血流量をプレシスモグラフを用いて測定した。またACE阻害薬Lisinoprilまたはプラセボ投与下にブラジキニン1-100pmol/minをアンジオテシン(1-7)1000pmol/minまたはプラセボとともに前腕動脈に注入した。結果として1000pmol/minのアンジオテンシン(1-7)はアンジオテンシンIおよびIIの血管収縮作用を減弱させた。アンジオテンシンIIへの作用で補正してもアンジオテンシンIへの作用は有意であった。またアンジオテンシン(1-7)とブラジキニンの相互作用はACE阻害薬の存在下では認められなかった。結論として健常人においてアンジオテンシン(1-7)はin vivo ACE阻害作用を有することが強く示唆された。 2.アンジオテンシンIIの酸化ストレス増強作用への影響 アンジオテンシンIIは酸化ストレス増強作用を介して、NOドナーの作用を減弱させることをしめしたが、子の作用にアンジオテンシン(1-7)が拮抗するかどうか検討した。前腕動脈にGTNとともにアンジオテンシンII(5pmol/min)またはプラセボを注入し、前腕血流量を測定した。実験日1には同時にアンジオテンシン(1-7)1000pbol/minを、2にはプラセボを動注した。アンジオテンシンIIのNOドナーに対する作用は、アンジオテンシン(1-7)の存在下では消失した。アンジオテンシン(1-7)はアンジオテンシンIIの酸化ストレス増強作用を介したNO不活性化にも拮抗する可能性が示唆された。 3.ヒト血中アンジオテンシン(1-7)濃度に及ぼすACE阻害薬の影響 健常人において、カプトプリル25mg経口投与により、血中のアンジオテンシン(1-7)濃度は有意に上昇しレニン活性の上昇と相関していた。高血圧患者においてもカプトプリル25mg経口投与により、血中のアンジオテンシン(1-7)濃度は有意に上昇しレニン活性の上昇および血圧の低下と相関していた。ACE阻害薬慢性投与下でもアンジオテンシン(1-7)濃度は上昇しており、降圧作用へのこのペプチドの貢献が示唆された。
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