研究概要 |
平成13年度は酸化LDL刺激による血管平滑筋の増殖はCyclooxygenase2(COX2)発現によって生じたプロスタグランジン(PGE2,TXA2)によることが示唆された。また、p42/44MAPKとp38MAPKがCOX2の発現に重要であることが明らかとなった。平成14年度はCOX2の転写調節機構について検討すると共に、MAPK以外の未知の経路の関与を明らかにすることを目的として実験行った。まず、cox2mRNA発現亢進機構を明らかとするため、cox2 promotor/luciferaseのchimera plasmidを作成し、実験を行った。酸化LDLにより、cox2 promotor/luciferase活性は上昇することが明らかとなった。また、その活性亢進はMEK1阻害薬であるPD98059により抑制され、p42/44MAPKが転写レベルで調節していることが明らかとなった。p38MAPK阻害によりCOX2mRNAの安定性が亢進することが明らかとなった。次に、酸化LDL刺激によって誘導される新しい遺伝子をDNAマイクロアレイによって検索した。その結果、次に、酸化LDL刺激によって発現するその他の遺伝子であるが、海外共向研究者である江口によるDNAマイクロアレイの手法によりいくつかの遺伝子の増減が明らかとなった。発現が亢進していたものには従来より報告されているprotooncogene c-fos, c-junやcox2などが含まれていたが、helix-loop-helix Id3なども認められた。発現低下が認められたものには、p21WAF/Cip1,p27Kip1などがあった。興味深いことに、Id3、p21WAF/Cip1、p27Kip1はいずれも細胞周期に関連する遺伝子である。酸化LDLによるこれらの遺伝子の発現の変化は、平滑筋増殖の機序に深く関与している可能性が示唆された。
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