研究概要 |
ルイスラットを用い心筋梗塞作成し、心筋梗塞作成直後より、細胞を梗塞部位に注入し細胞治療を試みた。細胞ソースとして骨髄より単球細胞または、新生児の心筋細胞を利用した。経時的には、心エコードプラ法を施行して収縮能、拡張能、心形態を検討し、旁胸骨部よりエコービームをいれて、心臓の各断面の短軸像、及び長軸像を測定した。ドプラ法にて、僧帽弁口のE波A波を検出して、E velocity, V velocity, E/A ratio, de celeration timeを測定し、拡張能の指標とした。細胞移植治療の効果判定は、心機能及び組織学的にリモデリング抑制効果を検討した。細胞内情報伝達系に関しては、梗塞部位、非梗塞部位のERK、JNK, p38が一過性に上昇し、AP-1, NF-kBも上昇した。細胞移植にてリモデリングが抑制傾向にあり、移植した細胞は組織にて定着していた(ホーミング)。また上昇している細胞内情報伝達系も抑制されていた。心機能に関しては、新生児の心筋細胞も細胞ソースとして利用した群においては、心機能改善効果が認められた。 ヒトを対象とした移植を想定した場合には、臓器提供者の組織欠損を伴わない臓器は血液と骨髄だけであり、骨髄細胞を用いて心筋細胞が分化誘導できるのであれば、移植に対する倫理的なハードルは心臓移植よりはるかに低いものとなる。難治性心不全の治療の現状を考えると、ヒトにおける心筋細胞再生・新生の技術が心筋梗塞後心臓リモデリング・心不全の進展阻止今後大いに期待される。
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