研究概要 |
Fas-FasLシグナル伝達系の発現およびアポトーシスの誘導効果におけるプロテアソームの関与について、ヒト血管内皮細胞(HUVECs)を用いて検討した。細胞死の評価はTrypan-blue dye法、アポトーシスの検出はcell-death ELISA法を用いた。Agonisticな作用を有するFas抗体(CH11)単独ではHUVECsにアポトーシスの誘導できなかったが、種々の濃度のプロテアソーム阻害剤(lactacystinあるいはMG132)を同時に投与すると、濃度依存性にHUVECsにアポトーシスを誘導した。また、プロテアソーム阻害剤は濃度依存性に細胞表面Fasの発現を増強させることがフローサイトメトリー法により明らかとなった。最近動脈硬化の発生および進展に大きく関与する酸化LDLは最近プロテアソーム活性を低下させるという報告に着目し、酸化LDLをHUVECsに投与したところ、MG132と同様に細胞表面上のFasの発現を濃度依存性に増強させた。また種々の濃度の酸化LDLにCH11抗体を同時に投与した場合、アポトーシスの程度は濃度依存性に高値を示した。また酸化LDLはFas, EADD, FLICE,あるいはミトコンドリア依存性にアポトーシスを誘導するBcl-family, p53の遺伝子発現レベルには影響しないことを種々のプライマーセットを用いたRT-PCR法により示した。以上より酸化LDLはHUVECsにおける細胞表面Fasの発現を増強させ、Fas刺激によるアポトーシスの感受性を増強させることが明らかになった。また、この細胞表面Fas蛋白の増強は転写レベルの増強ではなく、プロテアソームによるFasの蛋白分解を酸化LDLが阻害することによる可能性が示唆された。
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