研究概要 |
ヒト培養血管内皮細胞(HUVECs)および血管平滑筋細胞(hVSMCs)は共に、プロテアソーム活性の低下に伴い、細胞表面Fasの発現を増強し、同時にFas刺激に対する感受性を獲得することを平成13年度に明らかにした。平成14年度は、酸化LDLとプロテアソーム活性との関連をみた。プロテアソーム活性は合成蛍光基質(sLLVY-MCA)を用い、蛍光マルチプレートーリーダーにより半定量的に測定した。酸化LDLは細胞内のプロテアソーム活性を濃度依存性に低下させ,細胞表面のFasを増強させ、Fas誘導アポトーシスに対する感受性を高めた。酸化LDLは、HUVECsとhVSMCsの両者において酸化LDLに対する受容体の一つであるlectin-like oxidized low density lipoprotein-1 (LOX-1)の発現をmRNAのレベルで増強させることをRT-PCR法により明らかにした。一方、LOX-1に対する中和抗体は、酸化LDLによる細胞表面Fasの発現増強効果を有意に抑制し、同時にFas誘導アポトーシスに対する感受性を低下させた。これらの知見より、酸化LDLによるFas誘導アポトーシスの感受性獲得の機序は以下のように推察される。酸化LDLはLOX-1を介し細胞内へ取り込まれ、ユビキチン-プロテアソーム系の活性を低下させる。このため、細胞表面Fasの発現は増強され、Fas刺激に対する感受性を獲得する。 最近アンジオテンシンII (AngII)がLOX-1の発現を増強させると報告された。我々は、酸化LDLとAngllの相互作用によるFas誘導アポトーシスの感受性に及ぼす効果をみた。酸化LDLによるLOX-1 mRNAの発現増強効果は、Angllの追加投与により有意に高まった。またAngllの追加投与は、酸化LDLの単独投与に比し、Fas誘導アポトーシスを有意に増強させた。
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