Fas-FasLシグナル伝達系の発現およびアポトーシスの誘導効果におけるユビキチン・プロテアソーム系の関与について、培養血管平滑筋細胞および培養血管内皮細胞を用いて検討した。またFas-FasLシグナル伝達系を介するアポトーシスの臨床的意義についても検討した。結果は以下のようにまとめられる。実験的研究1)培養血管平滑筋細胞および培養血管内皮細胞において、ユビキチン・プロテアソーム系はFas誘導アポトーシスの感受性に関与していた。すなわち、プロテアソーム活性低下による細胞表面Fasの発現増強がFas誘導アポトーシスの感受性獲得に関与していた。2)粥状動脈硬化の発生および進展に主要な役割を担う酸化LDLは、培養血管平滑筋細胞あるいは培養血管内皮細胞において、プロテアソーム活性を低下させることにより、Fas誘導アポトーシスの感受性を増強させた。臨床的研究1)可溶型FasLおよび末梢血中の単球における膜型FasLは、健常群および安定狭心症群に比し、急性冠症候群において有意に高値であった。2)可溶型FasLと膜型FasLとの間には相関がみられなかった。これは両者を調節する因子が異なることによると推察された。以上より、Fas-FasL伝達系を介する血管構成細胞のアポトーシスの誘導は、少なくとも培養系において、ユビキチン・プロテアソーム系により調節されていることが明らかになった。またFas-FasL伝達系は急性冠症候群の病態に関連している可能性が示唆された。
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