研究概要 |
当該研究の目的は、酸化ストレスによる血管内皮細胞アポトーシスの過程にレニン・アンジオテンシン系(RAS)がどのように関与するか検討することである。今年度は、ラットのモデルおよび培養内皮細胞を用いて、RAS調節による効果とその作用機序について解析した。 1.雄Wistarラット頸動脈内への低濃度過酸化水素短時間暴露(H_2O_20.01mM,5分間)により24時間後に誘導される内皮細胞アポトーシスは、アンジオテンシンII type1受容体拮抗薬オルメサルタン投与(1mg/kg/day、術前3日間)により、対照群(9.8±0.5%, mean±SE)に比べて有意に低下した(6.6±0.8%, p<0.01)。この程度はACE阻害薬テモカプリルの効果と同等であった。逆に、アンジオテンシンII(0.7mg/kg/day)の投与は内皮細胞アポトーシスを増加させた。 2.ウシ頸動脈由来培養内皮細胞を低濃度過酸化水素(H_2O_20.2mmol/L、1.5時間)で処理した後、経時的に細胞を回収し、DNAの断片化および細胞内Caspase-3活性測定によりアポトーシスを定量した。内皮細胞に対するH_2O_2傷害前24時間のテモカプリル(10〜100μmol/L)添加により、アポトーシスは濃度依存性に有意に抑制された。同様に、H_2O_2傷害前24時間のオルメサルタン(10μmol/L)添加は内皮細胞アポトーシスを有意に抑制したが、type2受容体拮抗薬PD123319は影響しなかった。また、テモカプリルの効果にnitric oxide合成酵素阻害薬L-NAMEは影響しなかったことから、RASによる内皮細胞アポトーシスの促進作用はンジオテンシンIItype1受容体を介すると考えられた。
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