研究概要 |
1.8週令のTNF-αノックアウトマウス(KO)、およびワイルドマウス(WT)において心筋梗塞を作成した。術後1、3、7日に超音波による心機能評価を施行後、組織を摘出し炎症細胞浸潤、免疫組織染色、TUNEL法を用いて細胞死を検討した。 2.WTにおいて術後1日から梗塞、非梗塞部でTNF-α、IL-6濃度の上昇を認め、3日後においてさらに上昇した。 3.超音波所見は、3日、7日後には左室拡張終期径は有意にKO群で小さく、左室短縮率は有意にKO群で高値であった。組織学的視察では、炎症細胞浸潤は1日後より認められ、3日後にはマクロファージの浸潤が著明となった。KOではWTに比しいずれの時期でも炎症細胞浸潤は減少傾向を示した。心筋細胞壊死は3日後には著明となり、7日後には梗塞部位の非薄化と左室の拡大も認められた。免疫組織学的観察では、matrix metalloproteinase (MMP) 2,9,13は、1日後より梗塞領域の炎症細胞、心筋細胞に発現が認められたが、梗塞周囲の心筋細胞にも発現していた。3,7日後にはその発現は著明となり、非梗塞領域の一部の心筋細胞にも発現がみられた。KOではWTに比しいずれの時期でもMMP2,9,13の発現は減少傾向を示した。また、梗塞周囲におけるTUNEL陽性細胞数は有意にKO群において少なかった。 4.TNF-αノックアウトマウスでは、心筋梗塞後の細胞傷害の程度は軽度で、MMP 2,9,13の発現もWTに比し少なく、TNF-αがMMPを介して心筋梗塞後の病態形成に関与していると考えられた。非梗塞領域でもMMPの発現が認められ心筋梗塞後リモデリングとMMPとの関連が示唆された。TNF-αを抑制することにより心機能が保たれたことより、抗サイトカイン療法が今後の心筋梗塞、心不全治療の一つになりうる可能性が示唆された。
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