研究概要 |
生体内には三種の一酸化窒素合成酵素(NOS)が存在し、その酵素内電子伝達制御様式とその補酵素・基質依存性のアイソフォーム間の相違が、スーパーオキサイドを始めとする活性酸素を起こす脱共役反応に与える効果を検討し、NOSによる活性酸素放出と数々の病態との関連性に対する知見を得ようとした。 1. 3種のNOSの合成 3種のNOS(全酵素、及び酸化領域のみ)を大腸菌内にoverexpressionすることによって大量に合成した。 2. NOSの脱共役反応を定量する系の確立 我々はサクシニル化したチトクロムCがNOSとは直接反応せず、スーパーオキサイドと反応することを示した。また、NOSからの過酸化水素生成量はFe(SCN)_4^-による発色で定量したが、これはNOSから直接生成したものとスーパーオキサイドの不均化によって生成したものの両方を含む。そのため、直接の過酸化水素生成量は上記の定量値からスーパーオキサイド定量値を差し引くことにより評価した。最後に、直接の水の生成は全電子供給量を表すNADPHの酸化量からトータルの過酸化水素生成量を差し引いて求めた。 3. 各種NOSにおける脱供役反応の相違 まず3種のNOSが補酵素のBH_4および基質のアルギニン飽和すなわちフル活性状態のときのNADPH酸化活性とそれに対応するNO生成速度を比較した。NOS1,NOS2ではフル活性時にはNADPHから受け取った電子の90%以上をNO生成に使用しているが、NOS3ではトータルの活性が低いもののフル活性時にも半分程度の電子しか使用しておらず、残りは脱共役反応を起こしているものと思われる。 また、BH_4存在下で基質のない状態、即ちフルで脱共役が起こっているときに発生する活性酸素の比率を検討した。NOS1とNOS3は主にスーパーオキサイドを発生するのに対し、NOS2では過酸化水素を発生することが分かった。
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