研究課題
基盤研究(C)
生体内には三種の一酸化窒素合成酵素(NOS)が存在し、それぞれ全く別の生理機能のためにNO生成を担っている。そしてある条件下では、NOSはNOを産生せずスーパーオキサイド(・O_2^-)を始めとする活性酸素を生成する脱共役反応を起こすことが知られている。そこでNOSによる活性酸素放出と数々の病態との関連性およびNOSの発生する活性酸素が生理的な細胞内情報伝達に用いられる可能性について検討した。昨年度までにNOSの合成とNOや活性酸素の検出・定量技術は確立され、本年度はそれを用いて更なるNOSの性質の相違や脱共役反応の条件に焦点を当てて研究を進めた。1.各種NOSにおける脱供役反応の相違昨年三種のNOSがフル活性状態のときのNADPH酸化活性とNO生成速度を比較し、NOS3ではフル活性時にも脱共役反応を起こしていること、また、基質がなく完全脱共役状態でNOS1とNOS3は主に・O_2^-を発生するのに対し、NOS2ではH_2O_2を発生することを明らかにした。本年度はこの脱共役反応の補酵素および基質類縁体依存性を調べた。補酵素を変化させると活性酸素生成量全量は変化するが、・O_2^-及びH_2O_2生成量の比率はほとんど変化しない。基質類縁体を変化させても基本的には総反応速度が変化するのみで比率には影響しながったが、還元領域から酸化領域への電子伝達を完全に阻害するL-NAME存在下での・O_2^-生成量が増加した。これは電子の流れの阻害によって還元領域における・O_2^-優位の脱共役反応が強調された結果と考えられる。2.脱供役反応を亢進させる電子受容体の存在と生理的意義NOと活性酸素共存下において8ニトログアニンが生理的に生成してNOSの強力な脱共役剤として働き、NOSによる・O_2^-産生を大きく高めNO生成を阻害することがわかった。それが肺炎などの炎症時の病態を増悪させることを突き止めた。
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