研究概要 |
虚血・再灌流時における5'AMP-activated protein kinaseの役割と心筋のエネルギー産生に与える影響について検討することを目的とする.AMPKは脂肪酸代謝を亢進すると共に,間接的にミトコンドリアにおける糖酸化作用を抑制する.またグリコーゲンの代謝を調飾している可能性が示唆され極めて興味深いkinaseである.実験方法(1)虚血再灌流時の心機能とグリコーゲンの代謝についてラット摘出灌流心を用いて、Working Heart法にて灌流30分間、基質を投与しない条件で灌流し心筋内グリコーゲンを枯渇させたあと,3H-glucoseを含む灌流液を用い30分間灌流、その後、基質としてpalmitate(0.4-1.2mM),lactate,11mM 14C-glucoseを加え灌流実験を行い,心筋内グリコーゲンの代謝,外因性のグルコース代謝率を測定コントロール灌流後no-flow ischemiaを15-30分作成し,60分の再灌流.glucose oxidationはhyamineにて14CO2をトラッピングし、またグリコーゲン代謝は灌流液中の3H2Oをシンチレーションカウンターにて測定.(2)acetyl-CoA carbpxylaseの活性は14C- bicarbonate fixation assayにて,AMPK活性はγ-32P-ATPを合成ペプタイドSAMSに結合させ、Hardieらの方法によりその活性値を測定.結果:虚血時間25分、再灌流60分の場合心機能の回復は57.1%であったのに対して虚血時間30分では20.3%と有意にその回復率は低値を示した.そして、AMPKの活性は0.58±0.14、0.85±0.09(nmol.min-1.mg)と有意な高値を示した.またACCは5.9±1.0,4.2±0.3(nmol.min-1.mg)と有意な低値を示した.再灌流後のグルコース代謝は両群間で有意差はなかったものの,脂肪酸代謝は虚血時間30分,再灌流60分群で高値を示した.考察:虚血時間の長さにより心機能の低下が著明となり,虚血再灌流時の脂肪酸代謝の先進が認められた.そして,再灌流後の脂肪酸代謝の調節機構にAMPKが深く関与している可能性が示唆された.
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