研究概要 |
<目的>心外膜側細胞と心内膜側細胞の中間に存在するM細胞のもつ電気生理学的特徴がT波形成および不整脈発生に重要であるとして注目されている。これまでのM細胞の検討は単離心筋細胞もしくは切除心筋モデルでの検討であり(1)広範な心筋組織からのelectrotonic interactionの影響、(2)自律神経の影響、(3)tensionの影響、(4)甲状腺などの内分泌ホルモンの影響が考慮されていない。そこで拍動心でのM細胞の電気生理学的意義を検討する実験を行った。<結果>実験は静脈麻酔下にイヌを恒温ベッドに固定し気管内挿管後、人工呼吸下に胸骨正中切開し、心膜切開後心臓を露出する。洞房結節をペアンで結紮しこれを挫滅し心拍数を低下させた。ペーシングカテーテルを右心耳に装着して各刺激周期で刺激した。今年度はまず生体位拍動心より合計128点の単極電位(心外膜側、心内膜側、M細胞それぞれ40点)を同時記録しそれぞれの活動電位持続時間と相関するactivation recovery interval (ARI)を記録した。刺激周期800msec, 600msec, 400msecで刺激した時のARIを比較すると600および400msecの刺激では、記録部位でARIの長さに差はなかった。しかし800msecではM細胞領域のARIは他の領域に比べて5〜10msec程度延長する傾向が認められた。gap junction抑制剤であるヘプタノールにより細胞間electrotonic interactionが減弱するとM細胞領域のARIはさらに20msec程度延長しARI gradientが増大した。しかし実験成功例が少ないため統計的な有意差は確認できていない。さらに実験数を増やして検討する予定であるが拍動心においてM細胞の活動電位持続時間は他の領域に比べて差はなく徐脈時またはgap junction機能が低下した際、活動電位持続時間が延長し不整脈を発生する可能性が示唆された。
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