雑種成犬(N=18)を麻酔開胸後、ホルマリンを房室結節に局所注入して完全房室ブロックを作成し、心電図(H誘導)、心外膜側より単相性活動電位(MAP)左室内圧(LW)を同時期録した。心房心室同時ペーシングにより刺激周期を350msecで高頻度刺激してMAPとLVPのalternansを誘発した。コントロール記録後、β刺激薬isoproterenol静注によりこれらalternansが消失した。β遮断薬であるpropranolol静注でalternansは逆に増大した。また、PDEIII阻害薬であるmirlinoneを静注するとalternansは消失した。以上の結果よりalternans発生にPKA依存性リン酸化経路が重要な働きを持つことが示され、そのtargetとして筋小胞体Caポンプ機能に注目した。そこで筋小胞体Caポンプ機能阻害薬であるthapsigargineを静注するとLVPとMAPのalternansは増大した。このことよりalternansの発生には筋小胞体Caポンプ活性が重要な働きを持つことが示された。特に細胞内Ca cyclingが遅延すると電気的、機械的alternansが発生して不整脈発生の要因になりうると考えられた。また、実際に活動電位波形のalternans発生にはL型Ca電流が重要であることを我々は既に発表しているが(Crculation : 88 ; 2894)、それ以外の電流として細胞内Caにより活性化されるCa感受性一過性外向き電流(Itoca)に注目した。ItocaのブロッカーであるDIDSを静注したところalternansは消失。この結果よりItocaも活動電位alternans発生に関与することが明らかなった。
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