研究概要 |
アルファアドレナリン受容体刺激により誘導される心筋保護のメカニズムは、プロテインキナーC(PKC)の活性化を通じて行われることがいくつかの報告によりわかってきた。また、虚血耐性によるメカニズムにおいてPKCがチロシンキナーゼ(PTK)活性の上流に位置することが解ってきたが、しかし、アルファアドレナリン受容体刺激による心筋保護の機序におけるPTKの役割は不明であった。しかしこの研究により、その役割が解明された。家兎の心筋虚血モデル(左冠動脈前下行枝を30分間結紮し180分間再灌流)を用い、Control, Phenylephrine(25μg/kg), Phenylephrine(25μg/kg)+Chelerythrine(PKC inhibitor : 5mg/kg), Phenylephrine(25μg/kg)+Genistein(PTK inhibitor : 5mg/kg), Phenylephrine(25μg/kg)+Chelerythrine(5mg/kg)+Genistein(5mg/kg), Phenylephrine(25μg/kg)+Genistein(PTK inhibitor : 5mg/kg)+PMA(PKC activator : 4μg/kg)の各群で梗塞巣の割合をTTC染色を用いて観察した。結果は、虚血領域に占める梗塞巣の割合として、Phenylephrineによるアルファアドレナリン受容体刺激で梗塞巣は、コントロールに比し有意に減少したが、この効果はPKC inhibitorのChelerythrineやPTK inhibitorのGenisteinの投与により減少した。また、PKC activatorのPMA投与もPTK inhibitorのGenisteinの作用で梗塞巣縮小は認められなかった。この結果からアルファアドレナリン受容体刺激による心筋保護的の機序にプロテインキナーゼCならびにチロシンキナーゼ依存性の機序が考えられ、加えて、チロシン・キナーゼは、家兎におけるアルファ-アドレナリン受容体刺激による心筋保護効果の経路では、プロテインキナーゼCの下流に位置するものと考えられた。
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