研究概要 |
冠動脈硬化症の性差は著しく、その発症と進展に性ホルモンの関与が想定されるものの、作用メカニズムの解明は不十分である。本研究は、女性ホルモン-ホルモン受容体系における異常が新たな冠危険因子であるとの仮説を検証することが目的である。平成13年度は,冠動脈造影の施行と研究の趣旨に同意の得られた臨床症例を対象とし,エストロゲン受容体α遺伝子異常の検討を行い,特定のハプロタイプが疾患発症年齢の独立した予測因子であることを明らかにした(第66回日本循環器学会学術集会発表). これと併行して末梢血性ホルモンの高感度測定を行い、平成14年度に以下の知見を得た。早発性冠動脈硬化症男性患者(65歳以下)のうち安定型狭心症患者64例と、冠動脈造影にて動脈硬化性変化を認めない年齢をマッチさせた対照群男性66例を比較した。患者群では対照群に比し、有意ではないものの、男性ホルモンである遊離テストステロン(FT)がやや低く、女性ホルモンである高感度エストラジオール(HsE2)がやや高かった。両者の比(FT/HsE2)をとると、対照群に対し患者群では有意に低値であり、各性ホルモンの絶対値ではなく、両者のバランスが冠動脈硬化症に関係する可能性が示唆された(第67回日本循環器学会学術集会発表予定)。
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