研究概要 |
冠動脈硬化症の発症頻度における著しい性差は、性ホルモンがその発症と進展に深く関与していることを示唆しているが、そのメカニズムの解明は不十分である。本研究は、女性ホルモン-ホルモン受容体系における異常が新たな冠危険因子であるとの仮説を検証することが目的である。 平成13年度は,冠動脈造影の施行と研究の趣旨に同意の得られた臨床症例を対象に分子遺伝学的検討を行い、エストロゲン受容体α遺伝子における特定のハプロタイプが疾患発症年齢の独立した予測因子であることを明らかにした(第66回日本循環器学会学術集会発表)。平成15年度には遺伝子解析を追加し、またアメリカの複数の大学との共同研究として欧米人との比較検討を行った。近日中に成績公表を予定している。 平成13年度より継続してきた末梢血における性ホルモンの高感度測定により、「男性ホルモンおよび女性ホルモンの絶対値ではなく、両者のバランスが冠動脈硬化症に関係する」という新しい概念を提唱した{Coronary Artery Disease 2004 (in press)}。 平成15年度には、冠動脈硬化症治療薬であるスタチンに対する反応性におよぼすエストロゲン受容体α遺伝子多型の影響をタフツ大学との共同研究により検討した、その結果、同薬剤によるLDLおよびHDLコレステロールの変化が、同遺伝子の特定ハプロタイプと有意に連鎖していることを見出した。これは女性ホルモン受容体の遺伝素因が冠動脈硬化症に対する反応性を規定することをはじめて見出した点で画期的である(投稿中)。
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