研究概要 |
レニンーアンジオテンシンII(AngII)は心筋虚血後の組織再構築に深く関与し、ACE阻害薬によるAngII作用抑制は心保護作用を持つことがよく知られている。しかしながら、ACE阻害薬の虚血部血管新生への影響に関しては一定の結論は出ておらず、心筋虚血後の側副血行路形成など血管新生へのAngIIの作用は不明な点が多い。最近はVEGF・bFGF遺伝子や骨髄細胞移植による血管再生医療が注目されており、これらの治療実施時でのAngII依存性血管新生を検討することは非常に重要である。私達は微小冠動脈内皮細胞(CMEC)にはVEGFとVEGF受容体が存在しCMECではAngIIは1型受容体(AT1R)を介してHeparin-binding EGFを遊離させVEGF・angiopoietin-2産生を刺激すること、2型受容体(A : T2R)はそれを抑制することを見いだした。これは"AngII-1型受容体(AT1R)拮抗薬が心筋虚血後の側副血行路再建には抑制的に働く?"と考えられるが、大規模臨床試験ではこれまでAT1R受容体拮抗薬とACE阻害薬の心保護効果に差は認められていない。 AT1受容体欠損マウスではレーザードップラーで評価っされる虚血下肢での血流量の回復は著明に減弱していた(3週後には40%減弱)。免疫組織染色では新生毛細血数は減少していた。AngIIの投与にても虚血下肢での血流量は回復しなかった。虚血部に集積する単球・リンパ球数も減少しており、末梢血のFACSではAT1受容体欠損マウスにおいてCD34-,FLK+hematopoietic cellの骨髄からの動員が減少していた。これらの結果はAngIIは骨髄からの血管芽細胞の動員、局所での血管新生因子の供給の減弱を介して血管新生に関与することが示唆された。
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