研究概要 |
マクロファージの遊走機能やサイトカイン産生に重要なPYK2の動脈硬化病変形成に及ぼす影響を調べるため、PYK2欠損マウスと動脈硬化のモデルマウスであるApoE欠損マウスとのダブル欠損マウスを作成し、ApoE単独欠損マウスとくらべ動脈硬化病変への修飾を調べた。ダブル欠損マウスの動脈硬化病変は、ApoE単独欠損マウスと比べ粥状硬化面積が減少し、その原因として動脈硬化巣へ浸潤するマクロファージ数の減少が観察された。また、ダブル欠損マウスの動脈硬化巣において、ApoE単独欠損マウスと比べ、動脈硬化発症に関わる因子群即ち、TNFα,IL-1β産生の減少や、単球に対する接着分子であるVCAM-1の血管内皮細胞上の発現の減少、また、凝固促進因子PAI-1などの発現減少が、みられた。また、ApoE単独欠損マウスの動脈硬化巣の血管内皮細胞において、活性化した(チロシンリン酸化された)PYK2の量が増加し、同様に、チロシンキナーゼSrcの活性化及び、抗リン酸化チロシン抗体で検出されるチロシンリン酸化蛋白量も増加していた。更に細胞周期を制御する蛋白であるp21やp16蛋白質の発現が、ApoE単独欠損マウスでは、動脈硬化巣において血管内皮細胞で低下していたが、ダブル欠損マウスにおいては、それらの発現は比較的保たれていた。以上、ApoE, PYK2ダブル欠損マウスにおいては、ApoE単独欠損マウスと比べ、単球の動脈硬化巣への遊走機能の低下とサイトカイン産生低下による血管内皮細胞の活性化の低下による動脈硬化の減弱があり、PYK2の動脈硬化病変発症へ及ぼす分子メカニズムが解明された。
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