研究課題/領域番号 |
13670767
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
甲斐 久史 久留米大学, 循環器病研究所, 助教授 (60281531)
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研究分担者 |
新山 寛 久留米大学, 医学部, 助手 (30309778)
桑原 史隆 久留米大学, 医学部, 助手 (90279167)
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キーワード | 遺伝子治療 / 心不全 / TGF-β / 拡張障害 / 心筋線維化 |
研究概要 |
(1)TβRII : Fcキメラ遣伝子作成と、そのドミナントネガティブ活性検討:ヒトTβRIIの細胞外ドメインにイムノグロブリンFc鎖を結合させたHA-taggedキメラ遺伝子をPCR法を用いて作成し発現プラスミドベクターpVR1255に組み換えた(pVR1255TβRII : Fc)。in vitro発現系を用いてTβRII : Fcタンパク質を精製した。TGF-β投与による培養ラット胎児心筋細胞・心筋線維芽細胞のコラーゲンmRNA発現活性化をマーカーとしたin vitroアッセイ系によりTβRII : Fcタンパク質の抑制作用を確露した。 (2)TβRII : Fc遣伝子導入法の確立:HA-tagged TβRII : Fc遺伝子組み換え発現プラスミドpVR1255TβRII : Fcをnaked DNA法にてラット大腿骨格筋に筋注導入し局所でTβRII : Fcタンパク質を発現させ、血中に分泌されたTβRII : Fcにより生体内の作用部位(心臓)においてTβRII : Fc機能を拮抗阻害するという戦術を用いる。 導入局所発現を抗HA免疫染色にて、血中TβRII : Fc濃度を抗ヒトTβRII ELISA法にて、TβRII : Fc発現の程度と時間経過を検討したところ、pVR1225プラスミドの発現が導入局所筋肉においてきわめて低く、血中には有意な分泌が得られていないことが明かとなった。このため、現在新たな発現ベクター数種に組み換えて最も生体内での発現効率の良いものをスクリーニング中である。 (3)圧負荷肥大心モデル:ウィスターラットの腎動脈直上で大動脈を縮窄し高度の心筋線維化に伴い拡張不全が進展する圧負荷肥大心モデルを作成した。平成14年3月上旬現在TβRII : Fc遺伝子導入法が確立されていないため、抗TGF-β中和抗体を用いた生体内TGF-β機能抑制実験を行っている。 抗TGF-β中和抗体+圧負荷群・非免疫IgG+圧負荷(コントロール)群にランダマイズ。圧負荷手術1日前よりに抗TGF-β中和抗体または非免疫IgGを連日腹腔内投与し圧負荷手術28日後まで飼育。 a.生理学的評価:左頸動脈に留置したカテーテルにて覚醒時血圧を、心エコー法にて、左室拡張期内径・収縮能の指標として左室内径短縮率・拡張能の指標として左室流入血流波形decerelation time(DT)およびE/A比を経時的に測定し比較検討。 b.組織学的・分子生物学的検討:心臓を摘出し以下を検討。組織学的検討-心筋細胞肥大・心筋線維化率、免疫組織学的検討-TGF-β活性の指標として線維芽細胞増殖(PCNA)。ノザンブロット法-心臓内TGF-β発現。TβRII:Fc遺伝子群・コントロール群の比較検討およびTGF-β機能抑制開始時期の違い(心筋線維化完成前後)による治療効果を比較した。以上から、抗TGF-β中和抗体により、血圧・左心室肥大・収縮能には変化を認めないが、心筋線維芽細胞活性化の抑制、心筋線維化の抑制が認められさらに拡張障害の改善を認めた。現在、英文専門誌に投稿中である。 c.圧負荷血管における外膜栄養血管の評価:圧負荷モデルを用いて、高血圧が大動脈外膜栄養血管の新生に与える影響を検討した。圧負荷により中膜平滑筋層の相対的虚血がHIF-1・VEGF発現を引き起こしその結果、大動脈外膜栄養血管が形成されること、外膜栄養血管形成により中膜虚血が代償されること、高脂血症がこの外膜栄養血管形成を抑制することを明かとし報告した。
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