1 心房細動によるKv1.5チャネル遺伝子発現調節の細胞内情報伝達機構の解明 すでに報告したin vivo心房細動モデルにおける急性期Kv1.5mRNA増加の細胞内情報伝達機構を摘出灌流標本モデルを用いて検討した。心房細動による心房筋伸展が、P38-MAPKおよびCaM/CaMKII経路の燐酸化を介してKv1.5転写調節領域にあるCRE-binding Proteinの燐酸化を迅速に導くことが判明した。また高頻度心房興奮はCRE-binding proteinの燐酸化を引き起こすことなく、CREに結合しうるAP-1をde novoで合成した。以上のことからin vivo心房細動で見られるKv1.5遺伝子発現は多様な細胞内情報伝達系を介していると推測される。 2 心房細動による他のイオンチャネル遺伝子発現について 本年度はCaチャネルについての検討を行い、L型Caチャネルの副サブユニットであるα2δ2が主サブユニットであるα1cより早期にdown-regulationされることが判明した。 3 心房細動誘発因子のイオンチャネル発現調節 1)2)の結果から心房細動誘発因子といわれる種々の刺激因子が種々のイオンチャネルリモデリングを引き起こしている可能性が極めて高いと考え、心房細動誘発因子のイオンチャネル遺伝子発現修飾を検討した。Kv1.5およびKv4.2イオンチャネル遺伝子発現には有意の日内変動を認め、両者の遺伝子発現はほぼ鏡像的な関係にあり、Kv1.5遺伝子発現日内変動の一部は交感神経機能に依存していた。心房細動誘発囚子として知られるアルコールは、Kv1.5およびHCN4チャネルの迅速な遺伝子発現を引き起こし、心房細動誘発を容易とした。これらの結果は、不整脈治療標的を考える上で、イオンチャネル転写調節研究の重要性を喚起するものと考えられた。
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