研究課題/領域番号 |
13670776
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
有賀 正 北海道大学, 大学院・医学研究科, 寄附講座教員 (60322806)
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研究分担者 |
崎山 幸雄 北海道大学, 大学院・医学研究科, 寄附講座教員 (80133734)
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キーワード | Wiskott-Aldrich症候群 / 血液幹細胞移植 / フローサイトメトリー / WASP分子 / Mixed Chimera |
研究概要 |
Wiskott-Aldrich症候群(WAS)は、血液幹細胞移植(HST)が成功しなければ予後が不良である原発性免疫不全症のひとつである。近年、その原因遺伝子(WASP遺伝子)が同定され、我々も、WAS患者の診断や、保因者診断を分子遺伝学的に実施してきた。また、我々は、抗WASP抗体を用いて細胞質内のWASPをフローサイトメトリーで検出する系(FCM-WASP)を確立し、簡便な患者診断、保因者診断が可能であることを報告してきた。今回、FCM-WASPの系を用いてHSTを実施したWAS症例の解析を試みた。 全国の医療機関の協力により、HST前後のWAS症例12症例の検体を得た。 得られた結果は以下の通りである。 (1)FCM-WASPの系では、レシピエントの細胞とドナーの細胞が細胞内WASP分子の発現量によって容易に識別でき、移植後のMixed chimera(MC)の解析に極めて有用であった。 (2)細胞表面抗原との二重染色により、移植後のMCの解析が細胞のリネージごとに評価可能であった。 (3)移植後のMCは6/12人に認めた。 (4)検出されたレシピエント由来の細胞では、単球が最も高頻度に検出され、絶対数も多かった。 (5)末梢血単球のMC状況が骨髄のMC状況を反映していた。 (6)MCとなる移植とならない移植は移植後早期に出現してくる細胞の種類の差に関連があることが示唆された。 (7)三重染色法の導入により、移植後に存続するレシピエント由来のT細胞はナイーブ細胞の表現系を維持していることが判明した。 今後も、症例を蓄積し移植後の生着状況GVHD等の関連を反映する検査結を模索し、またこれらの研究を通じてWASP分子が生体内での血液系細胞の分化にどう関連するかを解析する予定である。
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