研究概要 |
高グリシン血症は、グリシンの酸化的分解の障害により体内にグリシンが蓄積し、中枢神経障害症状を呈する遺伝性代謝病である。その責任遺伝子として、第9染色体上のGLDC遺伝子と第3染色体上のAMT遺伝子が明らかになっている。典型例では、新生児期からけいれん、昏睡、筋緊張低下などの症状を持ち、生命予後の悪い重篤な疾患である、しかしながら、高グリシン血症には、非典型例が存在し、この中には、1)発症が遅く精神発達遅滞を中心とし昏睡などの症状を欠く乳児型高グリシン血症、2)新生児期に発症するがその経過が一過性であり3-8週間で血清グリシン濃度が正常化する一過性高グリシン血症、の2つの病型が存在する。今回、私共は研究でこの2)の一過性高グリシン血症家系の候補遺伝子解析を行い、日本人家系において第16染色体上のGCSH遺伝子に遺伝子変異を世界で初めて同定した(Kure, et al.,Ann Neurol, 2002;52:643-646)。見出された遺伝子変異は、第4イントロンの受容部位に存在するスプライス・コンセンサス配列であるagがatに置換する変異で、ヘテロ接合体として同定された。更に、リンパ芽球mRNAの解析によりこの変異アレル由来のGCSH mRNAは発現していないことを確認した。今回の研究により、非典型型の高グリシン血症患児でGCSH遺伝子変異が同定されたことにより、GCSH遺伝子が高グリシン血症の新しい責任遺伝子の一つであることが示された。
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