研究概要 |
1.小児期H.pylori胃炎の病理所見および胃酸分泌能の検討: まず、小児のH.pylori感染の診断法について、尿素呼気試験の有用性を検討した。予備的検討(J Gast roenterol 2001;36:606)でその有用性が確認され、さらに多施設研究(n=220)により生検法に対する本法の感度および特異度が97.8%、98.5%と高いこと、赤外線分光法(UBiT-IR 300,大塚製薬)が従来の質量分析法と同等の分析能を有することを確認した(Am J Gastroenterol投稿中)。また、便中抗原検査についても小児(n=264)における感度および特異度は96.1%、96.2%と高く、有用と考えられた。抗体法として尿中抗体法の有用性も示された(Pediatrics 2001;107:e87)。多くの生検組織を得にくい小児において、これら非侵襲的検査の併用によりH.pyloriの感染診断の精度は著しく向上すると考えられる。H.pylori胃炎の病理学的検討においては、約300例の小児の胃生検標本で感染群および非感染群のH.pylori density,炎症の活動性と程度、および萎縮のSydney Systemによるスコア化が終了し、現在統計解析中である。胃酸分泌能については症例数が少なく、結論するには至っていない。 2.小児期H.pylori胃炎の免疫病理学的検討: Ki-67免疫染色によりH,pyloriが粘膜細胞増殖を冗進ずることが確かめられつつあり、TUNEL法と平行して解析を進めている。また。好中球・マクロファージ、およびリンパ球の免疫染色による検討も進行中である。 3.血清pepsinogen値の検討: H.pylori感染は血清pepsinogen(PG)IおよびII値を有意に上昇させかつPG I/II ratioを低下させること、無症状の感染小児と比較して慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍を有する小児でPG IとII値の有意の上昇とPG I/II ratioの低下、さらにこれらの指標のH.pyloriの除菌による正常化が示された(Gastroenterology2001;120:A671)。これらの結果は、胃・十二指腸潰瘍の発症がH.pylori感染により惹起される胃粘膜炎症の程度と関連することを支持するものと考えられる。
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