研究概要 |
多施設研究により、小児の非侵襲的H.pylori診断法として尿素呼気試験(Am J Gastroenterol 2002;97:1668)および便中抗原検査(Am J Gastroenterol 2003 ; 98:296)の高い信頼性が確認された。従って、生検法とこれらの検査法を併用して対象症例(n=196)のH.pylori診断を行い、H.pylori胃炎を病理学的に検討した。H.pyloriは胃前庭部および胃体部の単核球と好中球の浸潤を惹起し、さらに感染小児において胃前庭部(51.9%)および胃体部(34.8%)に萎縮を起こすことが幸証された(投稿準備中)。この小児の高率な萎縮が本邦成人の高い胃癌発生に関連すると推測される。H.pylori感染と胃炎の関連性は、感染群における血清pepsinogen IとII値の上昇およびI/II比の低下など、血清学的にも確認された(Gastroenterology 2001;120:A671)。 次に、小児期の胃粘膜萎縮の発生機序に関し免疫病理学的検討(n=28)を行った。除菌療法を受けた10例においては、除菌前後での変化も検討した。H.pyloriは有意に粘膜上皮細胞増殖(Ki-6 7免疫染色、P<0.001)およびアポトーシス(ssDNA染色およびTUNEL法、P<0.001)を亢進させ、除菌の成功はこれらを有意に低下させた(共に、P<0.01)(日本栄養消化器肝臓学会雑誌2002;suppl:69)。H.pyloriが惹起する粘膜細胞増殖およびアポトーシスが小児の胃粘膜萎縮の発生に重要であることが示唆された。 胃酸分泌能(内視鏡的ガストリン試験)に及ぼす影響として(n=28)、H.pylori感染は胃酸分泌を亢進させる(P<0.05)、H.pylori陽性の十二指腸潰瘍患者(平均、6.56mEq/10min)は胃炎患者(3.01mEq/10min)より高い酸分泌を呈する(P<0.01)、ことが確認された(Gastroenterology, abstract. in press)。小児の十二指腸潰瘍の病態において、H.pylori、感染による胃酸分泌亢進が重要であると考えられる。
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