研究概要 |
マウス,ヒトのGATA-2遺伝子はアミノ酸をコードしない第1エクソンを2つ持ち,遠位側の第1エクソン(IS)からの転写は血液系の細胞や発生途上の神経組織に特異性が高い.そこで,ISエクソンから上流7kbpまでの領域,また,翻訳開始部位より上流8kbpまでの領域を緑色蛍光蛋白質(GFP)遺伝子に結合し,マウス受精卵に導入してトランスジェニックマウスを作成し,卵黄嚢,大動脈生殖隆起中腎(AGM)領域,胎仔肝臓の主な胎児期の造血組織にGFPの蛍光を認める複数のトランスジェニックマウスラインを得た。これらマウスのAGM領域においてGFPを発現する細胞の表面マーカー解析,血液細胞への分化能の検討を行い,GATA-2が造血幹細胞と血管内皮細胞の共通の母細胞であるヘマンジオブラストにおいて発現することを明らかにした.さらに,ヘマンジオブラスト培養系へのレトロウィルスによる過剰発現実験により,GATA-2の発現が血液細胞への分化に抑制的に働いていることを示した.また,GATA-2遺伝子領域の転写活性をトランスジェニックマウス法で検討し,上流3.1kbpまでの領域に造血組織での転写に必要な活性が,2.4kbpまでの領域に胎児期の神経系での発現に必要な活性があることを明らかにし,GATA因子の結合配列がシス因子として重要であることを示した.さらに,GATA因子はサイトカインによる血管内皮の接着因子発現の制御にも重要であること,GATA-2,GATA-3,GATA-6などの複数のGATA因子が同一のシス配列に結合して転写制御していることを示し,胎生幹細胞の試験管内分化系においてGATA因子の発現が中胚葉系細胞の分化の方向性決定に重要な役割を果たしていることを明らかにした.
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