研究概要 |
悪性黒色腫から樹立したA2085細胞株は野生型p53を発現している。機能萌に野生型であることはp53依存性の遺伝子p21、BaxがUV,IR刺激にて誘導されること、また変異型p53を導入することにより抑制されることから示された。A2085細胞に野生型IkBα、優性抑制的に働くN端(1-36)除去のδN-IkBαの安定発現性細胞株を樹立した。3つの細胞をTNFαで刺激するとIkBα導入株では細胞死が促進された。細胞をUV-Cで刺激すると野生型IkBα高発現細胞は細胞死が促進されたがδN-IkBα発現細胞では細胞死は促進されなかった。NFkBの活性化は2つの遺伝子導入細胞で著明に抑制されていることからUV-Cに対する反応性の違いはNFkBの抑制に依存しないことが予測された。UV-C刺激後のp53依存性に発現が調節されるアポトーシス促進因子であるBaxの発現を検討したところIkBα細胞ではBaxの発現が増強していた。p53の発現に相違は認められないことからIkBα細胞ではp53の転写活性が増強されていることが示唆された。無刺激の状態ではp53の転写活性に相違が認められないことからUV-C刺激後にp53あるいはIkBαが何らかの修飾を受けることが必要であることが示唆された。p53のリン酸化状態をリン酸化特異的抗体を使用して現在検討している。 細胞周期を制御するcdk2, cdk4の細胞生物学的意義を調べるために3T3細胞に優性抑制的cdk2(cdk2dn), dk4(cdk4dn)の安定高発現性細胞を樹立した6細胞株のCdk2, cdk4活性はそれぞれ抑制された。血清除去によりGO/Glに細胞周期を止め、血清添加により細胞周期を動かすと両者とも親株に比べ2時間ほどS期への進行が遅延した。cdk2dn細胞ではcdk4キナゼ活性は親株と同じに上昇したがcdk4dn細胞ではcdk4, cdk2ともに活性上昇が抑制された。血清除去によるアポトーシス誘導ではcdk2dn細胞は親株と違いがなかったがcdk4dn細胞ではアポトーシスが強く誘導された。以上よりcdk2, cdk4は細胞周期を同じように正に制御するが単にredundancyに働くのでなく、cdk4は血清因子に依存するサバイバルシグナルに関与すると考えられた。
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