研究概要 |
メラノーマ細胞(A2058)を用い,アロ抗原特異的細胞傷害生T細胞(CTL)を作製した。今までの我々の検討によりA2058細胞の内因性p53は機能的に野生型であることが示されている。CTLはIL2依存性細胞株であり,cold target inhibition法にて特異性について確認した。細胞傷害活性については^<51>Cr放出法および細胞増殖指数によって検討した。標的細胞を今までに作製した遺伝子導入細胞(dominant negative変異型p53,dominant negative変異型IkBα,野生型IkBα過剰発現)を用い,細胞傷害に与える影響について検討した。細胞傷害の程度については,いずれの変異細胞もコントロール細胞と有意な相違は見られなかった。これは^<51>Cr放出法および細胞増殖指数両方での検討でも同様であった。CTLから分泌されるgranulysin値を測定した場合,いずれの場合にも培養上清中に放出されるgranulysin値に有意な差を認めなかった。以上の事からCTLによるアロ抗原の認織とそれに引き続くCTLからの細胞傷害シグナルは同等である事,そしてCTLからの細胞傷害シグナルを受けた後の標的細胞の細胞障害(死)のシグナル伝達についてはNFkBやp53の経路は関与していない可能性が示された。 Monosomy7症候群は臨床的に予後不良の骨髄増殖性疾患と考えられている。またmonosomy7クローンにおけるがん抑制遺伝子WT1のmRNAの発現は正常クローンに比べ悪性度に比例して上昇していると報告されている。臨床的にmonosomy7を呈しながら免疫抑制療法に良好な反応を示した臨床症例について検討を加えた。Monosomy7クローンと正常クローンにおけるWT1のmRNAの発現を比較すると有意な差は認められなかった。In vitroにおいてシクロスポリンを作用させるとmonosomy7クローンは有意に減少していった。またコロニーアッセイでは正常クローンとmonosomy7クローンとの間で有意な差は認めなかった。以上のことから,monosomy7自体が悪性クローンの充分条件ではない事,また悪性度の指標としてWT1mRNA発現量は意義があること,そして悪性度の低いmonosomy7クローンはシクロスポリンにより細胞死が誘導される可能性が示された。
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