研究概要 |
1:細胞周期を制御するcdk2,cdk4の細胞生物学的意義を調べるために3T3細胞に優性抑制的cdk2(cdk2dn),cdk4(cdk4dn)の安定高発現細胞株を樹立した。細胞株のCdk2,cdk4活性はそれぞれ抑制された。血清除去によりG0/G1に細胞周期を止め、血清添加により細胞周期を動かすと両者とも親株に比べ2時間ほどS期への進行が遅延した。cdk2dn細胞ではcdk4キナーゼ活性は親株と同じに上昇したがcdk4dn細胞ではcdk4,cdk2ともに活性上昇が抑制された。血清除去によるアポトーシス誘導ではcdk2dn細胞は親株と違いがなかったがcdk4dn細胞ではアポトーシスが強く誘導された。以上よりcdk2,cdk4は細胞周期を同じように正に制御するが単にredundancyに働くのでなく、cdk4は血清因子に依存するサバイバルシグナルに関与すると考えられた。一方,cdk4とredundantに働くとされるcdk6について検討を加えたところ優性抑制性cdk6を高発現させた3T3細胞では細胞局期や細胞死に全く影響が認められなかった。このことはcdk4,cdk6は少なくとも3T3細胞においては生物学的に異なる機能を担う可能性が示された。 2:野生型p53を発現するメラノーマ細胞(A2058)を用い,アロ抗原特異的細胞傷害生T細胞(CTL)を作製した。CTLはIL2依存性細胞株であり,cold target inhibition法にて特異性について確認した。細胞傷害活性については^<51>Cr放出法および細胞増殖指数によって検討した。標的細胞を今までに作製した遺伝子導入細胞(dominant negative変異型p53,dominant negative変異型IkBα,野生型IkBα過剰発現)を用い,細胞傷害に与える影響について検討した。細胞傷害の程度については,いずれの変異細胞もコントロール細胞と有意な相違は見られなかった。CTLから分泌されるgranulysin値を測定した場合,いずれの場合にも培養上清中に放出されるgranulysin値に有意な差を認めなかった。以上の事からCTLによるアロ抗原の認識とそれに引き続くCTLからの細胞傷害シグナルは同等である事,そしてCTLからの細胞傷害シグナルを受けた後の標的細胞の細胞障害(死)のシグナル伝達についてはNFkBやp53の経路は関与していない可能性が示された。
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