研究概要 |
X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)はEBウイルス感染に対する免疫応答の欠陥を有する先天性免疫不全症候群であるが,その臨床的表現型は致死的伝染性単核症が約50%,悪性リンパ腫が約30%,低γ-グロブリンが約30%であり,家族歴が明らかでない場合には臨床的診断が難しい.また必ずしもEBウイルス感染の関与があるわけでもない.これまでわが国ではXLPの報告はなかったが,致死的伝染性単核症は散発的に報告されていた.1998年にXLPの責任遺伝子SAPが同定されたので,わが国にもXLP患者がいないか,全国から重症EBウイルス感染症ならびに慢性活動性EBウイルス感染症の男児例の検体を集め,SAP遺伝子解析を行った.その結果10例9家系のXLP患者を遺伝子診断することができた.また慢性活動性EBウイルス感染症においてはSAP遺伝子変異の関与はないことが証明された.わが国において潜在的にさらに多くのXLP患者が存在することが示唆された.XLPは致死的伝染性単核症に罹患すると致死率が約90%であり,造血幹細胞移植が唯一の根治的治療である.そこで簡易診断法の開発が望まれた.当教室で樹立された抗SAPモノクローナル抗体KST-3はフローサイトメトリーに利用することができ,すでに遺伝子診断された3家系のXLP患者ではSAP蛋白が低下しており,フローサイトメトリーによるXLPの診断が可能であることが示唆された.その後新たにEBウイルス感染症後の低γ-グロブリン血症,致死的伝染性単核症,EBウイルス感染の関与のない分類不能型免疫不全症の3家系においてフローサイトメトリーによりSAP蛋白の発現低下を示し,さらに遺伝子診断を行った.以上のように本研究は順調に成果を上げており,来年度もさらなるXLP患者の同定に貢献していきたい.
|