研究概要 |
Stem cell factor (SCF)単独刺激により誘導されるヒト臍帯血CD34陽性細胞からの肥満細胞産生システムを用いて、IL-9の影響を検討した。SCF+IL-9はSCF単独に比べ,より高い肥満細胞産生能を示した。IL-9は肥満細胞系前駆細胞に対しても明らかな増殖刺激活性を示したが、培養6週目の培養肥満細胞に対しては作用はみられなかった。SCF+IL-9により産生された肥満細胞数はSCF+TPOとほぼ同等であった。SCFあるいはSCF+IL-9はCD34^+CD38^+c-kit^+細胞からの肥満細胞産生を刺激したが,CD34^+CD38^-kit^+細胞には作用を及ぼさなかった。SCF+thrombopoietin (TPO)群は両分画から肥満細胞を誘導した。これらの結果に基づき、SCF+IL-9刺激下におけるアレルギー疾患患児の末梢血CD34陽性細胞からの肥満細胞産生能を健常児と比較した。SCFあるいはSCF+IL-9存在下で、気管支喘息患児の末梢血CD34陽性細胞からは明らかに多くの肥満細胞コロニーが形成された。IL-9はTPOとは異なる作用点でSCF依存性のヒト肥満細胞増殖を刺激すること、気管支喘息患者の循環血液中の肥満細胞系前駆細胞数は非発作期でも増加しており、末梢組織で肥満細胞が増加しやすい環境をもたらしていることが示唆された。 次いで、臍帯血由来培養肥満細胞(CBMC)と末梢血由来培養肥満細胞(PBMC)の形質、特にIgE受容体依存性ヒスタミン遊離能を比較したところ、PBMCは、CBMCに比べて、トリプターゼ、キマーゼの酵素活性が高く、ヒスタミン含有量も多かった。また、PBMCは、IgE受容体発現度、IgE受容体依存性ヒスタミン遊離能が高いため、ヒト肥満細胞の特徴を解明するためにより有用と考えられた。IL-6は、IgE受容体依存性ヒスタミン遊離量および細胞内ヒスタミン含有量の両者を増加させることから、PBMCに対する強力なヒスタミン遊離促進因子であることが明らかとなった。肥満細胞からのヒスタミン遊離を検討する場合、ヒスタミン遊離率だけでなく、遊離したヒスタミンの絶対量も考慮すべきであろう。現在、5'RACE法により見出された新規MITF isoformがmast cell関連分子の発現におよぼす影響をreporter assayなどでにより既知のMITF isoformsと比較検討している。
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