ペルオキシソーム欠損症は脂肪酸代謝など生体に重要な代謝機能を有しているペルオキシソームが先天的に欠損し、脳肝腎などに重篤な異常を呈する常染色体劣性の遺伝病で、臨床的には重症度の異なる3つの亜型が存在する。そのうちの軽症型では温度感受性を有しており、発熱とともに発症または重症化する極めて興味深い現象を有している。本研究者らは本症の病因、病態解明について遺伝子、タンパク立体構造解析を用いて13、14年度の2年間に以下の成果を上げたので報告する。 1.ペルオキシソーム蛋白の輸送に関わるPex13蛋白の結合部位であるSH3ドメインの立体構造をホモロジーモデリングより構造予測し、温度感受性を有する患者で置換されているSH3内のアミノ酸の3次元の位置と置換による構造変化を予測した。 2.SH3ドメインのリガンドとしてPex14pのPXXP部位を蛋白相互作用より推定した。 3.現在、患者において温度感受性を呈する置換アミノ酸をもつSH3ドメインのペプチドを精製し、BlAcoreを用いた温度変化による相互作用の変化を観察する系を構築した。 4.国内におけるX-linked adrenoleukodystrophy患者の全国調査に基づき本症の臨床像、診断、治療経過等についてその日本人症例の実態を明らかにした。 5.本邦における全ペルオキシソーム欠損症患者の臨床・遺伝・疫学的検討を行い、最大共通変異のPEX10遺伝子2塩基欠失が日本人創始者変異であることを明らかにした。
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