研究概要 |
肝炎後再生不良性貧血(再不貧)における先行する肝炎の原因ウィルス、末梢血リンパ球や骨髄CD34陽性細胞におけるFas/Fasリガンド系を介したアポトーシス、患者におけるHLA DRの分布について検討した。新たにわが国において激症肝炎ウィルスの原因であることが判明したE型肝炎ウィルスについて16例の患者血漿を用いてHEVlgM、HEVlgGを検討したが陽性例はみられなかった。肝炎後再不貧患者の末梢血CD3,CD4,CD8リンパ球におけるFas抗原の発現は、特発性再不貧患者や健常人コントロールと比較して統計学的にも有意に増加しており、とりわけCD4陽性リンパ球において顕著であった。骨髄CD34陽性細胞においても肝炎後再不貧患者は健常人や特発性再不貧患者と比較して発現の増加を認めた。肝炎後再不貧患者において、骨髄CD34陽性細胞を純化し、抗Fas抗体およびIFN-γを添加してコロニー形成能(CFU-GM, BFU-E)を検討したところ、抗Fas抗体の添加により、コロニー数の減少が観察された。以上の結果から肝炎後再不貧患者における造血障害の機序として、Fas/Fasリガンド系を介したアポトーシスの亢進が関与していると考えられた。特発性再不貧患者については正常人コントロールと比較してHLA DR2を所有する頻度が高いことが知られている。今回、肝炎後再不貧患者(n=30)、特発性再不貧患者(n=60)、正常人コントロール(n=250)についてHLADRの分布を検討した。肝炎後再不貧患者においては、特発性再不貧患者や正常人コントロールと比較して統計学的に有意にDR9を所有する頻度が高いことが判明した。(RR=4.1,P<0.05)。
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