研究概要 |
近年、臓器・造血幹細胞移植の適応の拡大、技術の進歩などに伴い、免疫不全患者が増加しつつある。サイトメガロウイルス(CMV)、Epstein-Barr virus (EBV)、単純ヘルペスウイルスなどのヘルペス属ウイルスはほとんどすべての人に潜伏感染しており、免疫機能の低下に伴い再活性化してくる。我々は、免疫不全患者におけるヘルペス属ウイルス感染症の発症・重症化のメカニズムを解析し、これら感染症の発症予測、早期診断、治療に役立てるため以下のことを行った。 1.ヒトヘルペス属ウイルス8種類に対するvirus load定量システムを確立し、臓器・造血幹細胞移植患者、新生児・未熟児など免疫抑制状態にある患者に応用し、ヘルペスウイルス感染症の迅速診断を行うとともに、これら感染症のモニタリングを行った(論文発表)。 2.ウイルス特異的細胞性免疫を迅速に定量するために、テトラマーおよび発現・精製した可溶性ウイルス抗原を用い、CMV, EBV抗原特異的T細胞を迅速・簡便に測定する方法を確立した(論文発表)。 3.造血幹細胞移植の重症合併症であるEBV関連リンパ増殖性疾患の診断に、real-timePCR法によるウイルス定量システムが有用であること、治療法の選択にウイルス特異的細胞性免疫の定量測定が役立つことも明らかにした。またEBV関連リンパ増殖性疾患の発症因子としてanti-thymocyte globulinの使用が重要であることを示した(論文発表)。 4.新生児の単純ヘルペスウイルス感染症ではウイルスの型が中枢神経系後遺症および再発に関連していることを示した(論文発表)。 5.未熟児へのCMV感染経路として母乳感染は重要であるが、症候性の感染症は少ないことを示した(論文発表)。
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