(1)妊娠10.5日のWistar系母ラットにビスダイアミン200mgを胃ゾンデにて投与し、冠循環が始まる妊娠14.5日から妊娠17.5日に母ラットを屠殺し胎仔を摘出した。また摘出1時間前に母ラットにBrdUを腹腔内投与し胎仔心のDNA合成を観察した。この結果、ビスダイアミンを投与しないコントロールにおいては妊娠15.5日胚頃から肉柱領域に比して心室壁でのBrdUの取り込みの増加がみられたのに対してビスダイアミン投与群では心筋の非薄化が著しく、心室壁でのBrdUの取り込みの減少が認められた。妊娠16.5日以降でもその傾向が認められた。 (2)妊娠9.5日目の妊娠マウスより胎仔を取り出し観察すると、心臓の裏側にあるPEO(proepicardial organ)からシート状の心膜が出現し心臓を覆い始めるのが観察される。これを取り出しゲル上で細胞培養を行うと、血管様の管腔構造を形成した。これによりPEOは管血管の原基となりうることが示唆された。 以上のような結果から、ビスダイアミンは神経堤細胞のみならず、心筋の発生を遅らせることが明らかとなった。その原因として、冠血管の原基となる心外膜の発生が遅れることにより冠循環の成立が遅れ、冠循環で栄養されるべき心筋細胞も発達しないことが示唆された。今後、PEOを用いて冠循環発生について発生早期からの成立過程や心筋細胞成長との関連について検討する。また、ビスダイアミンを用いた催奇形モデルにおいて冠動脈奇形の発生機序にっき詳細な検討を行う予定である。
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