研究概要 |
私たちは、ジストロフィン遺伝子エクソン内に存在するスプライシング促進配列(SES)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてエクソンスキッピングを誘導し、Duchenne型筋ジストロフィーでみられるout-of-frame欠失をin-frame欠失に変換することによって症状を軽症化する治療の臨床応用を検討している。エクソン19のスキッピングを誘導しエクソン20の欠失を有するDuchenne型筋ジストロフィーを治療し得ることをすでに報告しているが、このような治療法の適応をさらに拡げる上において、ジストロフィン遺伝子の欠失好発部位周辺のエクソンのスキッピングを誘導することが必要である。 初めにエクソン43,46および53においてSESの検討を行った。ショウジョウバエdsx遺伝子エクソン3・イントロン3・エクソン4よりなるミニジーンの下流に候補配列を付加し、in vitroスプライシング系においてイントロン3のスプライシングが誘導される程度によってスプライシング促進活性を評価した。エクソン43,46および53内の塩基配列を30塩基の長さに分けて検討したところ、エクソン43内に、SESを同定した。エクソン46内にはSESは同定されなかった。一方、エクソン53では2箇所にSESが同定された。さらに、エクソン26、34、45、50、52に関して検討したところ、エクソン26では中心部に、エクソン34、45では3'側にSESが同定された。一方、エクソン50、52では5'側にSESが同定された。 今後、これらのSESに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによって、エクソンスキッピングを誘導し得ることを明らかにし、アンチセンスオリゴヌクレオチドによるDuchenne型筋ジストロフィー治療の適応をさらに拡げることを検討する。
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