研究概要 |
1.本年度の研究目的 小児期に発症した高度肥満について、レプチン受容体下流に位置するメラノコルチン4受容体(MC4R)を始めとする情報伝達系の各遺伝子異常・多型の頻度を調査する。 2.本年度の研究計画と結果 【対象・方法】 15歳までに肥満度+20%以上の肥満を呈した35例(男22,女13,年齢10.8±4.0歳,Tanner1度19例,2度以上16例)を対象とした。身長145.0±17.8cm,体重59.8±20.4kg,肥満度48.2±18.6%。同意を得たのち末梢血由来DNAをPCRに供した。β3ARはW64Rをpinpoint法で、MC4Rは遺伝子全長をdirect sequenceした。有意差の検定はMann-Whitney-U法を用いた。 【結果・考察】 β3ARのwildtype : WWは24例(68.6%)、WRは11例(31.4%)、RRは0例であった。Rのallele頻度は0.16であり、一般成人の0.20と差がなかった。WW群とWR群の比較では、身長,体重,肥満度,ALT,TC,HDL-C,レプチンに差はなく、身長SDがWW群で有意に高かった。つまり、高身長を特徴とする小児単純性肥満にはβ3AR多型の関与は少ないものと考えられた。 経過中の最大体重増加率は9.4±4.3kg/年であり、β3ARのW64R変異による体重増加予測値1.5〜7.5kg/年(成人)を大きく上回っていたので、小児肥満の発症には消費エネルギー低下よりも摂食亢進の影響が強いと考えられる。 MC4Rの変異が摂食亢進に影響を与えることを予想して、MC4R遺伝子全長をdirect sequenceで解析したにもかかわらず、今回の対象にはMC4R多型を認めなかった。つまり、小児肥満発症における摂食調節にはMC4R遺伝子以外の他の因子の関与が予想される。
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