研究概要 |
成人期に発症するシトルリン血症II型(adult-onset citrullinemia type II, CTLN2)の遺伝子(SLC25A13)診断が可能になったが,新生児肝炎の臨床症状を呈する症例の一部にSCL25A13遺伝子の異常が認められることが明らかとなった.この遺伝子異常を認める症例の臨床像が明らかになり,neonatal intrahepatic cholestasis caused by citrin deficiency(NICCD)という新たな疾患概念として確立した(J Pediatr, 2001).臨床像としては,胆汁うっ滞,ビタミンK欠乏症,体重増加不良・多種高アミノ酸血症などが特徴としてあげられる.またその他にケトン血性低血糖,痙攣を合併する症例があり,NICCDとの関連が疑われる.なおビタミンK欠乏性の凝固検査異常を呈する症例は多いが,その原因として胆汁うっ滞による脂溶性ビタミンの吸収障害とともにミトコンドリア機能異常が考えられ今後の研究が必要である.肝組織像では胆汁うっ滞とともに脂肪肝・線維化の所見が認められることが明らかとなった.治療としては現在栄養療法としての中鎖脂肪酸含有特殊ミルク,蛋白制限,アミノ酸代謝異常用ミルクとともに,脂溶性ビタミンの補充・利胆剤投与などが有効で,これらにより,一部に低血糖症,痙攣が認められる症例があるものの殆どは2歳までに症状,検査所見が軽快することが判明した.なお,研究が進むに従って経過観察期間が延びており,最長7歳まで異常所見を認めない症例が確認できている.また肝生検像は乳児期早期に認められた胆汁うっ滞,脂肪肝,線維化の所見は1歳の時点ではほぼ軽快し,3歳には線維化の所見も軽快する症例が確認されている.また同胞の検査では同胞に遺伝子異常が見られる場合殆どが同じ組み合わせの変異を呈するが,両者に胆汁うっ滞などの臨床症状が認められるわけではなく,一児にのみ認められることが多い.今後長期予後を含む臨床経過,同胞例の臨床症状,治療法などの検討を要する.
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