臍帯血を用いて、細胞内サイトカイン染色法によりサイトカイン産生臍帯血Tリンパ球の解析を施行した。健常新生児の臍帯血ではIL-4産生CD3+臍帯血Tリンパ球は存在したが、IFN-γ産生CD3+Tリンパ球は殆どみられず、Th1/Th2バランスはTh2に傾いていた。胎内感染例ではIL-4産生CD3+臍帯血Tリンパ球のい変動はなかったが、IFN-γ産生CD3+Tリンパ球が増加していた。すなわちTh1に傾いていた。一方、アレルギー家族歴のある児のIL-4産生CD3+臍帯血Tリンパ球は増加していた。児のその後のアレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど)発症の有無について追跡調査した結果、アレルギー家族歴のある児の57%で早期のアレルギー疾患の発症がみられた。アレルギー家族歴があっても胎内感染児では、アレルギー疾患の発症はみられなかった。すなわち、胎内感染した場合、臍帯血がTh1に傾いたことにより、早期のアレルギー発症が抑制された可能性が考えられた。また、出生後には、離乳食やダニ感作などの影響よりも早期に、母親からの母乳の影響が大きく関与している。種々の母乳中のサイトカインをELISAで測定した結果、母乳中に免疫抑制因子であるtransforming growth factor-β1(TGF-β1)が高値であった。TGF-β1は経口免疫寛容に働く可能性があり、児のその後のアレルギー疾患発症への影響について検討する予定である。
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