研究概要 |
母乳栄養がアレルギー疾患の発症に及ぼす影響について母乳中のサイトカインの面から検討した。免疫抑制作用があり経口免疫寛容に関与しアレルギーを寛解に働く可能性があるtransforming growth factor-β1(TGF-β1)について、母乳中のTGF-βと測定して、児のその後のアレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎など)発症との関連を昨年度までに検討した。その結果、2才までのアレルギー疾患発症の母乳(1ヵ月時)中のTGF-β1は非発症例に比し有意に低値だった。また、IgE産生を抑制するIFN-γについても検討した。2才までのアレルギー疾患発症例のIFN-γは非発症例に比し低い傾向がみられたが統計学的有意差はみられなかった。 今年度は、母乳中のinterferon-gamma inducible protein 10kDa(IP-10)およびsoluble(s)CD30について検討した。IP-10はIFN-γとLPSによって誘導され、活性化したTリンパ球とモノサイトを走化するケモカインである。sCD30はIgE産生にかかわるTh2リンパ球の活性化により上昇する遊離した表面抗原であり、アレルギー疾患で末梢血中に増加している。アレルギー疾患発症例の母乳(1ヵ月時)中のIP-10は平均6,327±5,043pg/mlで非発症例は平均6,801±7,389pg/mlだった。血清中には38-361pg/mlと報告されており、母乳中には高濃度に存在することが明らかとなった。しかし、アレルギー発症に及ぼす影響はなかった。sCD30は測定感度以下だった。 アレルギー発症抑制には母乳中TGF-β1の関与が大きいものと考えられた。
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